糖化は肌だけの話ではない?AGEsと「筋肉の老化」を考える

LONGEVITY

「糖化」という言葉を聞くと、肌の老化や美容を思い浮かべる人が多いかもしれません。

私自身も、糖化というとこれまでは「血糖」や「肌」と結びつけて考えることが多くありました。

しかし調べてみると、AGEs(終末糖化産物)が蓄積するのは皮膚だけではありません。

近年では、筋肉量や筋力、身体機能との関係についても研究されています。観察研究をまとめたシステマティックレビューでも、AGEsが高い人ほど筋肉の状態が良くない傾向が報告されています。PubMed

そこで今回は、

筋肉の老化は「筋肉量が減る」だけなのか?

という視点から、糖化と筋肉の関係を考えてみます。


そもそも「糖化」とは何なのか?

糖化とは、糖とタンパク質や脂質などが酵素を介さずに反応する現象です。

いくつもの反応を経て、最終的にさまざまなAGEsが形成されます。

AGEsは一つの物質の名前ではありません。

その中には、研究で糖化ストレスの指標として使われるペントシジンなどもあります。

ここで区別しておきたいのが、

「糖化すること」と「血糖値が上がること」は同じではない

ということです。

慢性的な高血糖はAGEsの形成を促す重要な要因ですが、糖化反応そのものは糖尿病の人だけに起こる特殊な現象ではありません。


なぜAGEsは年齢とともに蓄積するのか?

身体をつくっているタンパク質は、すべて同じ速さで入れ替わっているわけではありません。

中でもコラーゲンのように比較的長く存在するタンパク質は、その間に糖化などの化学的な変化を受ける機会があります。

AGEsの中には、コラーゲンの間に架橋を形成するものがあります。

こうした変化が積み重なることで、組織の物理的な性質にも影響する可能性があります。

前回の記事では「コラーゲンを食べること」に注目しましたが、今回は反対に、身体の中にすでに存在しているコラーゲンが時間とともにどう変化するのかという話です。

そしてコラーゲンが存在するのは、皮膚だけではありません。

筋肉の中にもコラーゲンがあります。


筋肉は「筋線維」だけではない

筋肉について考えるとき、

「筋肉量を増やす」
「タンパク質を摂る」
「筋力をつける」

といったことに目が向きます。

もちろん、どれも重要です。

しかし実際の骨格筋は、筋線維だけでできているわけではありません。

筋線維を取り囲む**細胞外マトリックス(ECM)**があり、そこにはコラーゲンなどが存在します。

さらに神経や血管、腱なども含めて、筋肉は一つの組織として機能しています。

そう考えると、加齢によって変化するのは、

「筋肉の量」だけではなく、「筋肉という組織の質」も含まれるのではないか。

という視点が出てきます。


AGEsが多い人ほど、筋肉の状態が悪い?

2023年に発表されたシステマティックレビューでは、30歳以上を対象とした15件の観察研究が検討されています。

皮膚や血液などで測定されたAGEsが高いことと、筋力・筋肉量・身体機能などの低さとの関連が複数の研究で報告されていました。PubMed

さらに2026年には、日本の糖尿病のない70歳以上424人を対象とした研究が発表されています。

血中のペントシジンが高い人ほど、骨格筋量やphase angle、SPPBという身体機能評価が低いことと関連していました。

一方で、握力、椅子立ち上がり、サルコペニアそのものとは有意な関連がありませんでした。PubMed

つまり、

「AGEsが高ければ、すべての筋機能が悪くなる」

というほど単純ではありません。

さらに重要なのは、これらの多くが観察研究だということです。

AGEsが多かったから筋肉が衰えたのか。

筋肉が衰えやすい生活や身体の状態がAGEsにも影響したのか。

あるいは、別の要因が両方に影響しているのか。

現在の研究だけでは、因果関係までは断定できません。PubMed

「関連している」ことと「原因である」ことは分けて考える必要があります。


実際の筋肉を調べると何が分かる?

興味深い研究があります。

平均25歳の若年者20人と、平均78歳の高齢者22人を比較し、外側広筋から筋生検を行った研究です。

高齢者では若年者と比較して、

  • 大腿四頭筋の筋量:約29%低い
  • 筋力:約35%低い
  • 筋パワー:約48%低い

という違いがありました。

そして筋肉内のコラーゲンを調べると、AGEsの一種であるペントシジンは、高齢者で約200%高くなっていました。PubMed

つまり、およそ3倍です。

もちろん、この研究から、

「ペントシジンが増えたから筋力が落ちた」

と断定することはできません。

しかし、加齢による筋肉の変化を考えるとき、筋線維の量だけでなく、筋肉を取り巻く結合組織にも変化が起こっていることを示す興味深い結果です。PubMed


AGEsは筋肉に何をする可能性がある?

現在考えられている仕組みは、大きく二つあります。

一つは構造への影響です。

AGEsによるコラーゲンの架橋などによって、筋肉の細胞外マトリックスの性質が変化し、組織の硬さや力の伝達などに影響する可能性が研究されています。PubMed

もう一つは細胞への影響です。

AGEsはRAGEと呼ばれる受容体などを介して、炎症や酸化ストレスに関連するシグナルに影響する可能性があります。PubMed

ただし、こうしたメカニズムが人間の加齢による筋力低下をどの程度説明するのかは、まだ研究途中です。

メカニズムとして考えられることと、人間で実際に証明されていることは分けて考える必要があります。


では、糖質を減らせばいいのか?

ここで、

「AGEsが問題なら、糖質を減らせばいい」

と考えたくなります。

しかし、これも少し単純すぎます。

糖化は通常の代謝の中でも起こります。

慢性的な高血糖はAGEs形成を促す重要な要因ですが、AGEsの形成や蓄積には、加齢や酸化ストレス、炎症、腎機能など複数の要因が関係します。

AGEsは食べ物にも含まれ、高温で乾燥した調理によって増えやすいことも知られています。

しかし、

「焼いた食品は食べない」
「糖質は糖化するから避ける」

といった極端な食事にする必要がある、と現在の研究から結論づけることはできません。

糖化は、単一の食品を「良い・悪い」に分けるための考え方ではないと思います。


運動すればAGEsは減る?

ここにも興味深い研究があります。

2026年、55〜70歳の健康な男女41人を対象に、12週間の筋力トレーニング+HIITを行った研究が報告されました。

筋生検で調べると、AGEsは筋線維だけでなく細胞外マトリックスにも確認されました。

しかし12週間トレーニングしても、筋組織内のAGE量そのものには有意な変化がありませんでした。PubMed

だから、

「運動すれば、蓄積したAGEsが取り除かれる」

とは言えません。

一方で運動には、筋力や心肺機能だけでなく、インスリン感受性や糖代謝など多くのメリットがあります。

AGEsを減らすためだけに運動するのではなく、AGEsが形成・蓄積しやすい身体環境を長期的に整える一つの要素として運動を考える方が自然だと思います。


筋肉を守る=筋肉を増やす、だけではない

筋肉を守るというと、

筋トレをして、タンパク質を摂る。

まずそれが基本です。

(加齢による筋肉の変化については、以前の記事で「筋力と筋パワーの違い」についても紹介しました。)

しかし今回AGEsについて調べてみると、筋肉をもう少し広い視点から見る必要があると感じました。

筋肉は筋線維だけではありません。

筋線維を取り囲むコラーゲンや細胞外マトリックスがあり、神経や血管などと一緒に一つの組織として働いています。

そして、その組織は長い年月の中で少しずつ変化していきます。

だから健康長寿を考えるなら、

「どれだけ筋肉があるか」だけではなく、
「どんな状態の筋肉なのか」。

筋肉の「量」とともに「質」を考える。

糖化とAGEsの研究は、そんな視点を与えてくれるものだと思います。

参考文献

  1. Granic A, Hurst C, Dismore L, et al. Advanced glycation end products in skeletal muscle health and sarcopenia: A systematic review of observational studies. Mechanisms of Ageing and Development. 2023;209:111744. doi:10.1016/j.mad.2022.111744. PubMed
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  3. Haus JM, Carrithers JA, Trappe SW, Trappe TA. Collagen, cross-linking, and advanced glycation end products in aging human skeletal muscle. Journal of Applied Physiology. 2007;103(6):2068–2076. doi:10.1152/japplphysiol.00670.2007. PubMed
  4. Olson LC, Redden JT, Schwartz Z, Cohen DJ, McClure MJ. Advanced Glycation End-Products in Skeletal Muscle Aging. Bioengineering. 2021;8(11):168. doi:10.3390/bioengineering8110168. PubMed
  5. Flensted-Jensen M, Kleis-Olsen AS, Weinreich CM, et al. Advanced glycation end-products accumulate preferentially in type I muscle fibers of aging adults but are unchanged by training and polyphenol supplementation. Journal of Applied Physiology. 2026;140(4):1019–1027. doi:10.1152/japplphysiol.01093.2025.

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