「今日は早く寝よう」と思っていたのに、気づけば予定より遅い時間になっている。
動画をもう一本。SNSをもう少し。気になったことを、あと一つだけ調べる。
睡眠が大切だとわかっていても、夜の活動を終えるのは意外と難しいものです。
以前の「睡眠の規則性」の記事では、睡眠時間に加えて、毎日の睡眠・覚醒パターンにも目を向けることを紹介しました。
では、そのリズムを日常の中でどう守ればよいのでしょうか。
今回は「眠る予定だったのに、別のことを続けてしまう」という行動から、夜の終え方を考えてみます。
「眠れない」と「寝るのを先延ばしする」は違う
布団に入ったのに眠れない。
寝るつもりだったのに、スマホを見続けて布団に入っていない。
どちらも睡眠時間が短くなることはありますが、起きていることは同じではありません。
2014年の研究では、外的な事情に妨げられていないのに、意図した時刻より就寝を遅らせる行動を「就寝先延ばし(bedtime procrastination)」として取り上げています。177人の調査では、この行動は短い睡眠時間や、自己調整の指標と関連していました。[1]
ただし、これだけで原因が決まるわけではありません。仕事や介護で寝る時間を確保できない状況も、本人の自己管理の問題とは分けて考える必要があります。
まず見たいのは、眠る機会がないのか、寝ようとしても眠れないのか、それとも別の活動を終えられないのか。そこが違えば、考える工夫も変わってきます。
「楽しい」と「次が気になる」は、同じではない
夜にスマホを見続けるとき、ずっと楽しくて満足しているのでしょうか。
それほど面白くなくても、「次には何かあるかもしれない」と、画面を動かし続けてしまうことがあります。
この行動を考える手がかりになるのが、報酬を楽しむ「liking」と、報酬を求める「wanting」の違いです。
ベリッジらの研究では、この二つは区別され、ドーパミンは報酬を求める働きに重要な役割を持つとされています。「ドーパミン=快楽物質」という説明だけでは、捉えきれないということです。[2]
ただし、これをもって「夜更かしはドーパミンのせい」「やめられない人はドーパミンを制御できていない」と判断することはできません。
ここで持ち帰りたいのは、「満足しているから続けている」とは限らない、という視点です。
楽しいのか。それとも、次が気になっているのか。夜の行動を振り返るとき、この違いを考えてみる価値はありそうです。
夜の時間を、まだ終わらせたくないのかもしれない
もう一つ、自分が考えたのは「活動をやめにくい」ことと、「一日を終えたくない」ことの違いです。
日中は仕事や用事に追われて、ようやく自分の時間ができた。そこで寝てしまうと、また次の日が始まってしまう。
そんな気持ちがあるなら、寝る時刻だけを決めても、うまくいかないのかもしれません。
これは、今回の研究だけで証明された説明ではなく、自分なりの仮説です。就寝を遅らせる理由には、情報の続きが気になることに加えて、自分の時間をもう少し持ちたいという気持ちも含まれているのではないかと考えています。
その場合は、夜の楽しみをすべてなくすより、少し早い時間に楽しみを置けないか、一日の予定を詰め込みすぎていないかも見直したいところです。
寝る時刻に加えて、活動を終える合図をつくる
そこで、試してみたいのが「眠る時刻」だけでなく、「夜の活動を終える合図」を決めておくことです。
たとえば、次のような工夫が考えられます。
- 調べ物を始める前に、終える時間の目安を決める。
- 作業の続きは、翌日やることを一行残して閉じる。
- スマホの通知を切り、手の届きにくい場所で充電する。
これらは、全員に効果が保証された方法ではありません。「もう少しだけ」となったときに、その場で毎回決断しなくて済むようにする工夫です。
朝に回せる作業があれば、翌日に残すのも一つの方法でしょう。ただし、そのために早起きをして睡眠時間を削ってしまえば、目的が変わってしまいます。
大切なのは、やりたいことを続けながら、必要な睡眠の時間も確保できる終わり方を探すことだと思います。
スマホは、内容に加えて光も考える
就寝前のスマホについては、次々に情報が入ってくることに加えて、画面の光も関係します。
以前の「日中の光と体内時計」の記事でも触れたように、目から入る光は、体内時計が時刻を知るための重要な手がかりです。
夜に浴びる光は、その条件によって覚醒を促し、メラトニンの分泌を抑え、体内時計を後ろにずらすことがあります。
発光するタブレットでの読書と紙の本を比較した実験でも、タブレットの条件ではメラトニンの抑制や体内時計の遅れが確認されました。ただし、これは12人を対象に、暗い室内で最大輝度のタブレットを使い、就寝前の読書を毎晩約4時間、各条件で5晩行った実験です。スマホを暗くして短時間見た場合に、同じ大きさの影響が出るとまでは言えません。[3]
「スマホを見ると脳が朝だと思い込む」と言い切るより、夜の光が、眠りに向かう体のタイミングに影響しうる、と考える方が正確です。
影響は画面の明るさ、光の性質、見る時間や長さなどでも変わります。画面だけでなく、部屋全体の明るさにも目を向けたいところです。
眠る前は、紙の本を読むくらいがよさそう
こう考えると、眠る前にはスマホを置いて、紙の本をゆっくり読むくらいの過ごし方がよさそうだと感じます。
紙の本は、画面のように自ら光を発しません。部屋の照明も明るすぎないようにすれば、夜に浴びる光を抑える工夫にもなります。
通知が届かず、次の動画が自動で始まることもありません。自分でページをめくり、区切りのよいところで閉じることができます。
もちろん、紙の本でも夢中になって読み続ければ、寝る時間は遅くなります。読み切ることを目標にせず、眠くなったら閉じる。そのくらいの付き合い方を考えています。
睡眠の規則性を整えるために、寝る時刻を意識する。そして、その時刻に向かって夜をどう過ごすかも考える。
日中には光を取り入れ、夜には光を控える。その流れに、眠る前の過ごし方も合わせてみる。
スマホを置いて、紙の本を開く。眠くなったら、続きは明日に残して閉じる。
そんな夜の終え方から、試してみたいと思います。
参考文献
- Kroese FM, et al. Bedtime procrastination: introducing a new area of procrastination. Front Psychol. 2014;5:611. 就寝先延ばしの概念と睡眠・自己調整との関連を調べた研究。因果関係を確定するものではありません。
- Berridge KC, Robinson TE. Liking, wanting, and the incentive-sensitization theory of addiction. Am Psychol. 2016;71(8):670–679. 報酬を楽しむことと求めることを整理した総説。就寝先延ばしの原因を直接検証した研究ではありません。
- Chang AM, et al. Evening use of light-emitting eReaders negatively affects sleep, circadian timing, and next-morning alertness. Proc Natl Acad Sci USA. 2015;112(4):1232–1237. 発光端末と紙の本での読書を比較した小規模なクロスオーバー実験。


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