VO₂max(最大酸素摂取量)とは?健康長寿との関係と高め方を解説

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「以前より階段で息が上がるようになった」

「昔と同じ距離を走っても、疲れやすくなった」

「年齢を重ねても、できるだけ体力を維持したい」

こうした身体の変化を考えるうえで、知っておきたい指標があります。

それが、VO₂max(最大酸素摂取量)です。

VO₂maxは、マラソン選手などのアスリートが重視する数字というイメージがあるかもしれません。

しかし、VO₂maxを含む心肺体力は、一般の人にとっても重要な健康指標です。

実際に、心肺体力が高い人ほど、長期的な死亡リスクが低い傾向にあることが、多くの研究で報告されています。

では、VO₂maxとは何を表す数字なのでしょうか。

そして、健康のためには、どの程度高めればよいのでしょうか。

今回は、研究結果をもとに、VO₂maxと健康長寿の関係、年齢による変化、日常生活での高め方について整理します。

VO₂max(最大酸素摂取量)とは?

VO₂maxとは、運動強度を高めていったときに、身体が1分間に利用できる酸素量の最大値を示す指標です。

一般的には「mL/kg/min」という単位で表されます。

例えば、VO₂maxが40mL/kg/minであれば、体重1kg当たり1分間に最大40mLの酸素を利用できる能力を持つ、という意味です。

ここで知っておきたいのは、VO₂maxが単純な肺活量ではないことです。

運動中に酸素を利用するためには、肺から酸素を取り込み、血液によって運び、心臓から全身へ送り出し、最終的に筋肉で利用する必要があります。

つまり、VO₂maxには呼吸器、心臓、血液循環、血管、骨格筋など、さまざまな機能が関係しています。

私は、VO₂maxを単なる「スタミナの数字」ではなく、身体全体の酸素利用能力を表す指標として捉えています。

VO₂maxが高い人ほど長生きする?研究で分かっていること

心肺体力と健康との関係は、長年にわたり研究されてきました。

2018年に『JAMA Network Open』で発表された研究では、運動負荷試験を受けた成人122,007人を対象に、心肺体力と長期的な死亡リスクの関係が調べられました。

その結果、心肺体力が高いグループほど、全死亡リスクが低いという関連が認められました。

ただし、この研究ではトレッドミル試験から推定した運動能力を用いており、すべての参加者のVO₂maxを呼気ガス分析で直接測定したわけではありません。

2024年の大規模レビューでも関連が確認された

さらに、2024年に『British Journal of Sports Medicine』で発表された研究では、26件のシステマティックレビューが統合的に検討されました。

対象となった研究は199のコホート研究に及び、延べ2,090万件以上の観測データが含まれています。

その結果、心肺体力が1MET高いことは、全死亡リスクが約11〜17%低いことと関連していました。

METとは、安静時を基準として身体活動の強さを表す単位です。運動能力の評価にも利用されます。

なお、ここで示された11〜17%という数字は、VO₂maxを改善した人の寿命がその割合で延びることを意味するものではありません。

心肺体力が高い人ほど死亡リスクが低いという、観察研究に基づく関連です。

心肺体力の高い人は、身体活動量や生活習慣、もともとの健康状態なども異なる可能性があります。

それでも、多くの研究で一貫した関連が報告されていることは、健康を考えるうえで重要な知見だと思います。

特に重要なのは、体力が低い状態からの改善

米国心臓協会(AHA)は、心肺体力を健康状態を評価する重要な指標の一つとして位置づけています。

また、心肺体力が非常に低い人では、そこから少し高い水準になることにも大きな意味があるとしています。

これは一般的な健康づくりにおいて、特に重要な考え方です。

すべての人が高いVO₂maxを目指す必要はありません。

まずは、現在の自分の体力を少しでも改善すること。

特に体力が低い人ほど、その意義は大きい可能性があります。

VO₂maxは年齢とともに低下する

VO₂maxは、一般的に加齢とともに低下する傾向があります。

この変化には、最大心拍数の低下、心臓や血管の機能の変化、骨格筋の酸素利用能力の変化などが関係しています。

さらに、年齢とともに運動量が減ることも、心肺体力の低下に影響します。

ただし、同じ年齢であっても、VO₂maxには大きな個人差があります。

運動習慣、身体活動量、性別、遺伝的な要因、健康状態などによって数値は変わります。

そのため、「40代ならVO₂maxはこの数字でなければならない」と一律に考える必要はありません。

重要なのは、年齢による平均値と比較することだけではなく、自分自身の体力がどのように変化しているかを知ることです。

私が「上げられる時に上げておく」と考える理由

ここからは、研究結果そのものではなく、私が運動指導をするうえで大切にしている考え方です。

VO₂maxは、年齢とともに低下していく傾向があります。

それならば、上げられる時期にある程度高めておき、その後の低下をできるだけ緩やかにしていく。

そんな考え方があってもよいと思っています。

例えば、同じように加齢によって体力が低下するとしても、もともとの体力水準が高い人と低い人では、その後の日常生活への影響が現れるタイミングも異なる可能性があります。

階段を上る。

旅行先で長い距離を歩く。

新しいスポーツを始める。

こうした活動を無理なく楽しめる身体を、できるだけ長く維持したい。

私は、今の体力だけでなく、10年後、20年後にも余力を残しておくという視点で体力づくりを考えています。

もちろん、今のVO₂maxを高めておけば、将来の身体機能が保証されるわけではありません。

しかし、将来の選択肢を広げるために、現在の体力を育てておくことには意味があると考えています。

VO₂maxを高めるには?効果的な運動方法

VO₂maxや心肺体力を改善するためには、有酸素運動が基本になります。

ウォーキング、ジョギング、ランニング、サイクリング、水泳などが代表的です。

運動の効果は、現在の体力や運動強度、継続時間などによって異なります。

1.まずは中強度の有酸素運動から

運動習慣が少ない人であれば、まずは無理なく継続できる運動から始めることをおすすめします。

例えば、少し息が弾む程度の速歩やサイクリングなどです。

会話はできるものの、普段より呼吸が速くなる程度の強度が、一つの目安になります。

最初から長時間行う必要はありません。

10〜20分程度のウォーキングから始め、慣れてきたら時間や頻度を増やしていく方法でもよいでしょう。

WHOは成人に対して、週150〜300分の中強度有酸素運動、または週75〜150分の高強度有酸素運動などを推奨しています。

ただし、これは最初から達成しなければ運動の意味がないということではありません。

現在ほとんど運動していない人であれば、まず身体を動かす時間を増やすことが大切です。

2.運動に慣れてきたら、高強度の運動も選択肢になる

ある程度運動習慣がある人には、高強度インターバルトレーニング(HIIT)も選択肢になります。

HIITとは、比較的高い強度の運動と、低強度の運動や休息を交互に繰り返す方法です。

2021年のシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、中高年を対象とした14研究・429人のデータが分析されました。

その結果、インターバルトレーニングと中強度の持続的な有酸素運動は、どちらもVO₂maxを改善しました。

一方、平均的な改善幅はインターバルトレーニングの方が大きいという結果でした。

ただし、だからといって、すべての人がHIITを優先すべきというわけではありません。

高強度運動は身体への負担も大きく、体力や既往歴によって適切な方法が異なります。

特に、心血管疾患などがある方や、運動中に胸痛、強い息切れ、めまいなどが生じる方は、無理に高強度運動を行わず、医療専門職に相談する必要があります。

大切なのは、高い強度で追い込むことではなく、自分に合った強度で継続することです。

3.筋力トレーニングも組み合わせる

VO₂maxを高めるという目的では有酸素運動が中心になりますが、健康づくりをVO₂maxだけで考える必要はありません。

筋力、バランス能力、柔軟性なども、日常生活の身体機能に関係しています。

WHOも、有酸素運動に加えて、週2日以上の筋力トレーニングを推奨しています。

筋トレと有酸素運動の役割については、関連記事「筋トレと有酸素運動、健康のためにはどちらが重要?」でも整理しています。

VO₂maxはどこまで高めればいい?平均値との付き合い方

VO₂maxの数値を見ると、つい他人と比較したくなるかもしれません。

しかし、VO₂maxは年齢や性別、測定方法などによって違いがあります。

また、健康上の意味を考える際には、単純な数値だけでなく、同年代・同性の集団の中でどの程度の水準にあるかも参考になります。

健康のために運動するのであれば、アスリートのような数値を目指す必要はありません。

「VO₂maxを50まで高めなければならない」

「毎週HIITを行わなければならない」

ということでもありません。

現在の心肺体力が低い人であれば、そこから改善することに意味があります。

すでに運動習慣がある人であれば、年齢を重ねても体力を維持していくことが、一つの目標になるでしょう。

他人の数字を追いかけるより、自分の身体の変化を知ること。

私は、そのような使い方が健康づくりには適していると思います。

VO₂maxはどうやって測る?Apple Watchの数値は正確?

VO₂maxを直接評価する代表的な方法は、呼気ガス分析を伴う運動負荷試験です。

運動強度を段階的に高めながら、酸素摂取量などを測定します。

ただし、専門的な機器が必要であり、日常的に測定するのは簡単ではありません。

最近では、Apple Watchなどのウェアラブルデバイスでも、VO₂maxに相当する数値を推定できるようになっています。

こうした機器では、心拍数や移動速度などの情報をもとに推定値が算出されます。

そのため、表示された数字を、直接測定したVO₂maxと完全に同じものとして扱うことはできません。

また、体調、運動条件、計測状況などによって、推定値が変動する可能性もあります。

私自身、ウェアラブルのデータを見る際には、一回の測定値だけで判断しないことを大切にしています。

昨日より数値が下がったからといって、急に体力が落ちたとは限りません。

数週間から数か月、あるいは半年から1年という単位で変化を確認する。

そして、その変化を実際の運動能力や体調と照らし合わせる。

そうすることで、数字をより実践的に活用できると思います。

ウェアラブルとの付き合い方については、関連記事「HRVは高いほどいい?心拍変動から考える健康データとの付き合い方」でも考えています。

VO₂maxを高めれば、必ず健康になるのか?

ここまで、VO₂maxと健康長寿の関係について紹介してきました。

しかし、最後にもう一度確認しておきたいことがあります。

VO₂maxが高いことと、VO₂maxを高めれば必ず長生きできることは同じではありません。

心肺体力と死亡リスクの関係を示した研究の多くは、観察研究です。

一方、有酸素運動によってVO₂maxが改善することは、介入研究でも確認されています。

つまり、現在の研究からは、次の2つを区別して考える必要があります。

  • 心肺体力が高い人ほど、死亡リスクが低い傾向にある。
  • 適切な運動によって、VO₂maxや心肺体力を改善できる。

これらは、どちらも重要な知見です。

しかし、この2つを組み合わせて、VO₂maxを一定量高めれば寿命が何年延びる、と計算できるわけではありません。

私は、こうした研究結果を、数字を追いかけるためのものではなく、日々の運動習慣を考えるための材料として捉えています。

まとめ|10年後、20年後にも動ける身体をつくる

VO₂maxは、身体が酸素を取り込み、運び、利用する能力を表す重要な指標です。

多くの研究で、心肺体力が高い人ほど、死亡リスクが低い傾向にあることが報告されています。

また、VO₂maxは年齢とともに低下する傾向がありますが、運動によって改善することも可能です。

一般的な健康づくりでは、特別に高い数値を目指す必要はありません。

まずは自分の現在地を知り、少しずつ身体を動かすこと。

そして、運動習慣を継続しながら、できるだけ長く体力を維持していくこと。

私は、VO₂maxを単なる運動能力の指標ではなく、将来の身体の可能性を考えるための数字として捉えています。

上げられる時には上げておく。

そして、できるだけ長く維持する。

10年後、20年後にも、自分の意思で動き、行きたい場所へ行き、やりたいことに挑戦できる身体をつくる。

そのための一つの指標として、VO₂maxを活用していきたいと思います。


参考文献

  1. Mandsager K, et al. (2018). Association of Cardiorespiratory Fitness With Long-term Mortality Among Adults Undergoing Exercise Treadmill Testing. JAMA Network Open.
    https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2707428
  2. Lang JJ, et al. (2024). Cardiorespiratory fitness is a strong and consistent predictor of morbidity and mortality among adults. British Journal of Sports Medicine.
    https://bjsm.bmj.com/content/58/10/556
  3. American Heart Association. (2016). Importance of Assessing Cardiorespiratory Fitness in Clinical Practice.
    https://professional.heart.org/en/science-news/importance-of-assessing-cardiorespiratory-fitness-in-clinical-practice-a-case-for-fitness/top-things-to-know
  4. Poon ETC, et al. (2021). Interval training versus moderate-intensity continuous training for cardiorespiratory fitness improvements in middle-aged and older adults. Journal of Sports Sciences.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33825615/
  5. World Health Organization. (2020). WHO Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK566048/

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