スクワットをしている人を見ていると、しゃがむにつれて顎が上がり、首を反らせているケースをよく見かけます。
特に、
「スクワットでは正面を見ましょう」
と教わった経験がある人ほど、身体が前傾しても顔だけは正面へ向けようとすることがあります。
しかし、スクワットでは本当に「ずっと正面を見る」必要があるのでしょうか?
今回は、スクワット中の目線・頭・首・体幹の関係について考えてみます。
スクワットでは身体が前傾する
まず押さえておきたいのは、スクワットではしゃがむにつれて、ある程度体幹が前傾するということです。
その角度は、スクワットの種類、骨格、股関節や足関節の可動性、バーの位置などによって変わります。
つまり、立っている時としゃがんだ時では、身体そのものの向きが違います。
ここで重要になるのが頭と首の位置です。
【写真①:立位】

立位では、このように頭と体幹が比較的自然な位置関係にあります。
ところが、身体を前傾させながらも「正面を見続けよう」とするとどうなるでしょうか。
正面を見続けると、首を反らすことがある
【写真②:首を反らして正面を見ているスクワット】

この写真では体幹は前傾していますが、顔は前方を向いています。
そのため、体幹に対して頭を起こすような形になり、頸部の伸展が大きくなっています。
ここで言いたいのは、
「首を反らすこと自体が悪い」
ということではありません。
頸椎には本来、屈曲・伸展する機能があります。
問題にしたいのは、スクワットをするたびに「前を見なければ」と意識することで、「必要以上に首を反らす動作を繰り返していないか?」ということです。
「目線」はスクワットの動きにも影響する
実は、スクワット中の目線について調べた研究があります。
スクワット経験のある男性10名を対象に、目線を「下・正面・上」に変えてスクワットを行わせた研究では、目線の方向によって動作の特徴が変化しました。
特に下方向を見る条件では、正面や上方向と比較して股関節屈曲が大きくなり、体幹屈曲にも変化が生じる可能性が示されています。
つまり、
「目だけの話だから、身体の動きには関係ない」
とは言い切れません。
また、スクワットそのものではありませんが、頭部・目線の方向を変えることで頸部だけでなく胸椎・胸腰椎の運動にも変化が生じることを示した研究もあります。
頭の位置と身体の動きは、完全に別々ではないのです。
では、下を向けばいいのか?
ここは誤解してほしくないポイントです。
「正面を見るのがダメなら、下を向けばいい」
という話ではありません。
先ほど紹介した研究でも、過度に下方向へ目線を向けることで股関節や体幹の屈曲が増えることが報告されています。
私が意識してほしいのは、
「正面を見る」より「頭と体幹の関係を見る」
ということです。
【写真③:体幹に対して頭頸部を自然に保ったスクワット】

身体が前傾していくのであれば、頭部もその動きにある程度ついていく。
顎を必要以上に上げるわけでもなく、逆に首を丸めて下を向きすぎるわけでもない。
頭から背骨までのつながりを大きく崩さないというイメージです。
※厳密には脊柱は一直線ではなく、生理的な弯曲があります。「背骨を真っすぐ一本にする」という意味ではありません。
首だけを直そうとしない
もう一つ大切なのが、
首が反っているからといって、原因が首だけにあるとは限らない
ということです。
スクワットは多関節運動です。
足関節、膝関節、股関節だけでなく、骨盤や脊柱、胸郭など、さまざまな部位が協調して動きます。スクワットの動作には足関節・股関節・胸椎などの可動性が関係するという考え方もあります。
そのため私は、スクワットを見ていて首が大きく反っている人に対して、すぐに
「顎を引いてください」
だけで終わらせないようにしています。
なぜその人は首を反らしたくなるのか?
体幹の前傾はどうなっているのか?
胸郭はどう動いているのか?
バーを担ぐために無理な姿勢になっていないか?
目線を変えると動きはどう変わるのか?
こうした全身の関係を見ることが大切です。
「正しいスクワット」は一つではない
スクワットには、ハイバー、ローバー、フロントスクワット、自重スクワットなどさまざまな方法があります。
目的も、
筋力向上
筋肥大
競技力向上
健康づくり
リハビリテーション
など人によって違います。
そのため、すべての人に対して、
「頭は必ずこの角度」
「目線は必ずここ」
と決めてしまうのは適切ではありません。
身体の特徴や目的によって、適したスクワットのフォームは変わります。
だからこそ、フォームを見る時には一部分だけではなく、その人の身体全体がどう動いているのかを見る必要があります。
まとめ
スクワットでは、しゃがむにつれて体幹が前傾します。
その時に「ずっと正面を見なければ」と考えると、頭だけを起こして首を大きく反らせることがあります。
一方で、単純に下を向けばいいというわけでもありません。目線の方向そのものがスクワットの動きに影響する可能性があります。
大切なのは、
「どこを見るか」だけではなく、頭・首・胸郭・体幹がどうつながって動いているかを見ること。
スクワットは脚だけの運動ではありません。
全身が協調して行う動作だからこそ、フォームを見る時も全身を見る。
私はそんな視点を大切にしています。


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