今年、400mLの全血献血を3回しました。
きっかけの一つは、体に蓄えられている鉄への関心です。
鉄というと、まず思い浮かぶのは貧血ではないでしょうか。足りないと困る栄養素、という印象が強いと思います。自分も鉄について学ぶなかで、「不足」だけでなく「多すぎる場合」にも目を向けるようになりました。
以前の血液検査で、フェリチンという貯蔵鉄の目安になる数値が気になっていたことも、今回の献血につながっています。
ただし、献血後のフェリチンはまだ測っていません。下がっているだろうとは思っていますが、実際の変化は検査をするまでわかりません。
今回は結果の報告に先立って、なぜ献血を選んだのか、そこに何を期待しているのかを整理します。
フェリチンは、体に蓄えられた鉄を見る手がかり
鉄は、赤血球のヘモグロビンなどに必要な栄養素です。酸素を運び、体を動かすうえで欠かせません。
フェリチンは、その鉄を蓄えるタンパク質です。血液中のフェリチン値は、体内の貯蔵鉄を推定する指標として使われます。[1]
ただし、「鉄の量をそのまま表す数字」と考えると、少し話が違ってきます。
フェリチンは炎症や感染、肝臓の病気などでも上がります。高い数値が出たからといって、それだけで鉄過剰とは判断できません。逆に低いフェリチンは、貯蔵鉄の不足を知る重要な手がかりになります。[1][2]
自分が以前の数値を気にしていたことと、鉄過剰と診断されたことは別です。今回の記事でも、そこは区別しておきたいと思います。
鉄は「足す」だけでなく、蓄積にも目を向ける
体は腸から吸収する鉄の量を調節しています。一方、余分な鉄を積極的に排出する仕組みはほとんどありません。少量の鉄は皮膚や粘膜の脱落などで失われ、出血によっても失われます。[3]
男性には月経に伴う定期的な鉄の喪失がありません。ただし、だから男性は誰でも鉄が過剰になる、という意味ではありません。
自分にとって大きかったのは、「足りないなら補う」という見方に加えて、「すでに十分あるものを、さらに足していないか」という見方を持ったことです。
健康のために栄養を摂る。その前に、今の自分にどれくらい蓄えがあるのかを知る。鉄についても、そんな順番で考えるようになりました。
鉄と酸化ストレスの関係が、献血への関心につながった
もう一つ気になったのが、鉄と酸化ストレスの関係です。
鉄は体に必要な一方、適切に管理されていない鉄は、活性酸素を生む反応に関わります。こうした仕組みを背景に、体内の鉄と血管の病気、がんなどとの関係が研究されてきました。[4][5]
ただし、血液検査のフェリチン値は、体を傷つける鉄そのものを直接測っているわけではありません。「フェリチンが高い=体がサビている」と単純に結びつけることもできません。
それでも、もし自分の貯蔵鉄が必要以上に多いのであれば、減らすことに意味があるのではないか。
これが、献血を考えるようになったときの、自分の中にあった仮説です。献血によって老化を防げるとわかったわけではなく、鉄の蓄えを見直すことに関心を持った、ということです。
鉄を減らす研究を、どこまで受け取るか
鉄を減らすことへの関心につながった研究の一つに、FeAST試験があります。
末梢動脈疾患という、手足の血管が狭くなる病気のある1,277人を対象に、血を採って貯蔵鉄を減らす群と、対照群を比較した研究です。
この試験では、全体として死亡や主要な心血管イベントについて、統計的に有意な改善は確認されませんでした。[4]
一方、同じ試験のがんに関する解析では、平均4.5年の追跡で、新たな内臓のがんの発症は鉄を減らした群で38人、対照群で60人と、少ない結果でした。[5]
興味深い結果です。ただし、対象は血管の病気がある患者さんで、医療の管理下で行う瀉血です。健康な人が献血をする条件とは異なります。
この結果を、そのまま「献血をすれば、がんを予防できる」「長生きできる」と受け取ることはできません。自分にとっては、鉄の蓄積に目を向ける理由になった研究として捉えています。
献血を選んだのは、誰かの役にも立つから
全血献血では、赤血球とともに鉄も体の外に出ます。
カナダの血液事業者の資料では、500mLの全血献血で失われる鉄は約225〜250mgとされています。400mLでも鉄を失うため、自分は貯蔵鉄も減っているだろうと考えています。ただし、失った鉄の量から、フェリチンがどれだけ下がったかを単純に計算することはできません。[6]
そして、提供した血液が誰かの治療に役立つことも、献血を選んだ理由です。
自分の体への関心が、誰かを支える行動にもつながる。その点に意味を感じています。
もちろん、献血は医療に必要な血液を提供する行為です。自分の数値を調整するための治療とは区別し、健康状態を正しく申告して、献血の基準と当日の判断に従うことが前提になります。
下がっていれば、それでよいわけではない
今年は400mLを3回、合計1,200mLの全血献血をしました。
日本赤十字社の基準では、男性の400mL献血は年間3回以内、200mL・400mLを合わせた年間総量は1,200mL以内です。男性が400mL献血の後に次の全血献血をする場合は、12週間以上の間隔も必要です。[7]
ただし、これは誰にとっても年3回が望ましい、という意味ではありません。
献血を繰り返すことで、鉄不足になることがあります。また、ヘモグロビンが基準を満たしていても、貯蔵鉄が少なくなっている場合があります。[1]
日本赤十字社が通常通知している検査項目に、フェリチンは含まれていません。献血ができたことだけでは、貯蔵鉄が十分かどうかまではわからないのです。[8]
次に確認したいのは、フェリチンが下がったかどうかに加えて、下がりすぎていないかということです。ヘモグロビンや肝機能、体調と合わせて振り返りたいと思っています。
フェリチンの高値が続く場合は、自己判断で献血を重ねるより、まず原因を確認することが必要です。医療機関では、再検査や肝機能、鉄の運搬状態をみるトランスフェリン飽和度などを組み合わせて評価します。[2]
期待したことと、実際に起きたことを分けておく
今年、400mLの全血献血を3回した。これは、実践した事実です。
フェリチンは下がっていると思う。これは、今の予想です。
そして、それが自分の健康にどう影響したのかは、まだわかりません。
健康について学び、自分なりに考えて行動する。その後で、何が起きたのかを確かめる。
今回の献血についても、その順番で向き合いたいと思っています。次の血液検査で、期待していたことと実際の数値を照らし合わせ、その結果もあらためて記録する予定です。
参考文献・資料
1. Canadian Blood Services:Iron(鉄・フェリチンと献血者の鉄不足)
2. British Society for Haematology:Investigation and management of a raised serum ferritin
3. NIDDK:Definition & Facts for Hemochromatosis
6. Canadian Blood Services:The importance of iron for whole blood donors: a Canadian perspective
7. 日本赤十字社:献血基準

