筋トレと有酸素運動、健康のためにはどちらが重要?研究から考える最適な運動バランス

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「健康のために運動を始めたいけれど、筋トレと有酸素運動、どちらを優先すればいいのだろう?」

運動に使える時間が限られていると、このような疑問を持つ方も多いと思います。

筋トレは筋肉を鍛える運動。有酸素運動は心肺機能を高める運動。

どちらも健康に良いことは知られていますが、実は身体に与える刺激や得られる効果は異なります。

今回は、筋トレと有酸素運動が健康に与える影響を研究から整理し、限られた時間の中でどのように組み合わせればよいのかを考えていきます。

筋トレが健康にもたらす効果

筋トレというと、筋肉を大きくすることや体型を整えることをイメージするかもしれません。

しかし、健康のための筋トレには、それ以上の意味があります。

筋力は、立つ、歩く、階段を上る、重いものを持つといった日常動作を支える能力です。

加齢に伴って筋力が低下すると、これまで何気なくできていた動作が負担になることがあります。

筋トレは、こうした身体機能を維持・改善するための重要な手段です。

また、2022年に発表された16研究のメタ解析では、筋力トレーニングを行う人は、行わない人に比べて全死亡や心血管疾患などのリスクが低い傾向にありました。

特に週30〜60分程度の筋力トレーニングで、死亡リスクの低下との関連が大きいことが示されています。

ただし、これは観察研究をまとめた結果です。「週60分を超える筋トレには意味がない」ということではありません。

筋力や筋量の向上、スポーツのパフォーマンスなど、目的によって必要な運動量は変わります。

有酸素運動が健康にもたらす効果

一方、有酸素運動では、心臓や肺、血管、筋肉が協力して酸素を運び、利用する能力が重要になります。

その代表的な指標が、VO₂max(最大酸素摂取量)です。

VO₂maxは、身体が運動中にどれだけ多くの酸素を取り込み、利用できるかを示します。

心肺機能が高い人ほど死亡リスクが低い傾向にあることは、多くの研究で報告されています。

また、有酸素運動は心血管系の健康だけでなく、血糖の調節、持久力、日常生活での疲れにくさなどにも関係します。

ウォーキング、自転車、ランニングなど、運動の選択肢が多いことも特徴です。

特別な器具を使わなくても、生活の中に取り入れることができます。

VO₂maxについては、以前の記事でも詳しく解説しています。

VO₂maxと健康長寿についての記事

ウォーキングは、まとまった時間を確保しなくても日常生活に取り入れられる運動です。

特に食後の短時間の歩行は、食後血糖値の上昇を抑える方法として研究されています。

具体的なタイミングや運動時間については、関連記事「食後に歩くと血糖値は下がる?」で詳しく解説しています。

筋トレと有酸素運動を組み合わせるとどうなる?

では、健康のためにはどちらか一方を行えば十分なのでしょうか。

2020年に医学誌『BMJ』に掲載された、米国の成人約48万人を対象とした研究があります。

この研究では、運動ガイドラインを満たしていない人と比較して、推奨される運動量を満たした人の全死亡リスクは、次のように低い傾向が報告されました。

  • 筋力トレーニングのみ:11%低い
  • 有酸素運動のみ:29%低い
  • 両方を実施:40%低い

この結果を見ると、有酸素運動の方が重要だと感じるかもしれません。

しかし、注意したい点があります。

これは運動を無作為に割り当てた実験ではなく、生活習慣とその後の死亡リスクを追跡した観察研究です。

そのため、運動だけがリスクの違いを生んだと断定することはできません。また、この数字を使って、筋トレと有酸素運動の効果を単純に比較することも適切ではありません。

それでも、両方の運動を取り入れることの重要性を考えるうえで、参考になる結果です。

WHOはどのくらいの運動を推奨している?

世界保健機関(WHO)は、成人に対して次の運動量を推奨しています。

有酸素運動

  • 中強度の運動を週150〜300分
  • または高強度の運動を週75〜150分
  • あるいは両者を組み合わせる

筋力トレーニング

  • 全身の主要な筋群を使う運動を週2日以上

つまり、WHOも筋トレと有酸素運動の両方を推奨しています。

ただし、これは健康づくりの目安です。

運動習慣がない人が、最初からすべてを達成する必要はありません。

WHOも、運動をしていない状態から少しでも身体を動かすことに健康上の意味があるとしています。

最適な運動バランスは、人によって異なる

ここまでの研究から考えると、筋トレと有酸素運動のどちらが重要かという問いに、一つの答えを出すことは難しいと思います。

なぜなら、必要な運動は、その人の身体の状態や生活習慣によって変わるからです。

例えば、日常的によく歩いているけれど、筋力トレーニングをほとんど行っていない人。

この場合は、筋トレを取り入れることで、これまで不足していた刺激を補える可能性があります。

反対に、週に何度も筋トレをしているけれど、普段は座っている時間が長く、息が弾むような運動をほとんどしていない人。

この場合は、有酸素運動を追加することに意味があるでしょう。

もちろん、これは個人の運動配分を考えるための実践的な提案であり、誰にでも当てはまる厳密な公式ではありません。

大切なのは、自分が得意な運動を増やすことだけではなく、今の身体に不足している刺激にも目を向けることです。

週2〜3回しか運動できない人はどうする?

忙しくて運動時間を十分に確保できない場合は、筋トレと有酸素運動を組み合わせる方法が考えられます。

例えば、週2回の運動時間を確保できる場合。

1日目:全身の筋トレ+ウォーキング

  • スクワット
  • 背中を鍛える種目
  • 胸や腕を鍛える種目
  • 最後に15〜20分の速歩

2日目:全身の筋トレ+有酸素運動

  • 下半身の筋トレ
  • 上半身の筋トレ
  • 自転車やウォーキングを20〜30分

さらに、運動する日以外にも、通勤や買い物で歩く時間を増やせれば、有酸素活動の量を積み重ねることができます。

この例だけでWHOの推奨量をすべて満たせるわけではありませんが、運動習慣をつくる第一歩になります。

すでに運動習慣があり、十分な体力がある人なら、短時間の高強度運動を取り入れる方法もあります。

ただし、高強度運動は誰にでも適しているわけではありません。現在の体力や健康状態に合わせて強度を調整することが重要です。

高強度運動と健康についての記事

まとめ|大切なのは、自分に必要な運動を知ること

筋トレは、身体を支え、力を発揮する能力を育てます。

有酸素運動は、酸素を運び、利用し、活動を続ける能力を育てます。

それぞれに異なる役割があり、両方を組み合わせることには健康上の意味があります。

だからこそ、健康のための運動を考えるときは、「筋トレと有酸素運動のどちらが優れているか」だけで判断する必要はありません。

まずは、自分が普段どのような運動をしていて、どのような能力を伸ばしたいのかを考えてみる。

そして、無理のない範囲で不足している運動を取り入れていく。

運動の目的は、単に数値を改善することだけではありません。

歩くこと、出かけること、新しいことに挑戦すること。

これからの人生で、できることを増やしていく。

そのために筋力と心肺機能の両方を育てることには、大きな価値があると思います。

筋肉の健康を考えるとき、筋肉量だけでなく、その質にも目を向けることが大切です。

加齢や生活習慣に伴い、筋肉の内部に脂肪が蓄積する「筋肉の霜降り化」という変化が起こることがあります。

筋肉の質と健康との関係については、関連記事「筋肉の霜降り化」で詳しく解説しています。

身体を整える。可能性を広げる。


参考文献

  1. World Health Organization. WHO Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour. 2020.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK566046/
  2. Momma H, et al. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. British Journal of Sports Medicine. 2022.
    https://doi.org/10.1136/bjsports-2021-105061
  3. Zhao M, et al. Recommended physical activity and all cause and cause specific mortality in US adults: prospective cohort study. BMJ. 2020.
    https://www.bmj.com/content/370/bmj.m2031
  4. López-Bueno R, et al. Prospective Associations of Different Combinations of Aerobic and Muscle-Strengthening Activity With All-Cause, Cardiovascular, and Cancer Mortality. JAMA Internal Medicine. 2023.
    https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2023.3093

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