筋肉をつけるためにプロテインを飲む。
運動後にはプロテインを飲む。
最近では、健康維持や美容のために、毎日の習慣としてプロテインを取り入れる方も増えています。
しかし、私は以前から一つの疑問を持っています。
そもそも、私たちはそれほどまでにプロテインパウダーを必要としているのでしょうか。
タンパク質が身体にとって重要な栄養素であることは間違いありません。
ただし、タンパク質が必要であることと、プロテインパウダーを飲む必要があることは別の話です。
さらに、プロテインパウダーの安全性について考えるうえで、気になる調査結果があります。
2025年、米国の非営利団体Clean Label Projectが公表した、プロテインパウダーに含まれる重金属の調査です。
今回は、この調査で報告されたカドミウムなどの重金属について整理しながら、一般的な健康づくりにおけるプロテインの必要性を考えてみます。
プロテインパウダー160製品の調査で何が分かったのか
2025年1月、米国の非営利団体Clean Label Projectは、プロテインパウダーに含まれる重金属などの分析結果を公表しました。
調査対象は、米国市場の主要70ブランド、160製品です。
鉛、カドミウム、ヒ素、水銀などを含む化学物質について分析が行われました。
その結果、調査対象の47%が、米国カリフォルニア州のProposition 65など、報告書で用いられた基準を超えていたと報告されています。
また、21%の製品では、鉛についてProposition 65の基準の2倍を超える値が報告されました。
ただし、ここで注意したいことがあります。
47%という数字は、カドミウムが検出された製品の割合でも、健康被害を引き起こす製品の割合でもありません。
Proposition 65は、発がん性や生殖毒性が知られている化学物質への一定以上の曝露について、事業者に警告表示を求める制度です。
その基準を超えたことが、直ちに健康被害の発生を意味するわけではありません。
また、今回の調査は米国で販売されている製品を対象としたもので、日本国内のすべてのプロテイン製品に当てはまるものではありません。
それでも、製品によって重金属の含有量に違いがあるという結果は、品質を考えるうえで重要だと思います。
カドミウムとは?なぜ健康への影響が懸念されるのか
今回、私が特に注目したのはカドミウムです。
カドミウムは、土壌や水などの自然環境中に存在する金属元素です。
植物が土壌から取り込むことがあり、穀類や野菜、海産物など、さまざまな食品に含まれる場合があります。
カドミウムの特徴は、体内からの排出が遅く、長期間の曝露によって蓄積する可能性があることです。
特に、慢性的な曝露による腎臓への影響が知られています。また、骨への影響についても研究が進められています。
ただし、カドミウムが食品に含まれていること自体は、必ずしも珍しいことではありません。
重要なのは、検出されたかどうかだけではなく、どの程度の量を、どれくらいの期間摂取するかということです。
カドミウムが検出された食品を一度食べたからといって、それだけで健康被害が生じるわけではありません。
一方で、長期間にわたる曝露が問題となる物質だからこそ、毎日摂取するものについては、その品質を確認する意味があります。
植物性プロテインやチョコレート味で見られた違い
Clean Label Projectの調査では、プロテインの原料や風味によって、重金属の含有量に違いが見られました。
報告書によると、植物性プロテインパウダーでは、ホエイ由来の製品と比較して、カドミウムが約5倍多いという結果でした。
さらに、チョコレート味の製品では、バニラ味と比較してカドミウムが約110倍という大きな差が報告されています。
この背景には、カカオなどの植物原料が、栽培環境によってカドミウムを取り込むことが関係している可能性があります。
また、オーガニック製品では、非オーガニック製品と比較して鉛が約3倍、カドミウムが約2倍という結果も報告されました。
ここで注意したいのは、これらが調査対象製品の比較結果であるということです。
すべての植物性プロテインやチョコレート味の製品に、同じ傾向が当てはまるわけではありません。
また、110倍という数字は非常に大きく感じられますが、比較元の含有量が小さければ、倍率だけが大きくなる場合もあります。
実際の健康リスクを判断するには、絶対的な含有量や、1回当たりの摂取量を確認する必要があります。
それでも、この調査から一つのことが分かります。
「植物性だから安全」「オーガニックだから安心」というイメージだけでは、製品の安全性を判断できないということです。
健康的な印象を持つ製品であっても、原料や製造工程、品質管理によって成分には違いが生じます。
カドミウムが検出されたら、そのプロテインは危険なのか?
ここは、今回の記事で特に明確にしておきたい点です。
カドミウムが検出されたことと、その製品を飲めば健康被害が起きることは同義ではありません。
健康への影響は、カドミウムの含有量、摂取量、摂取頻度、曝露期間、その他の食品からの摂取量などによって変わります。
今回の調査は、製品に含まれる化学物質を分析したものです。
実際にプロテインを飲んだ人を長期間追跡し、健康被害が起きたかどうかを調べた研究ではありません。
また、個々の製品について、長期摂取による健康リスクを十分に評価できる情報がすべて公開されているわけでもありません。
したがって、この結果だけで「プロテインを飲むと腎臓が悪くなる」「プロテインは危険だ」と結論づけることはできません。
一方で、長期間の曝露が問題となる物質が、一部の製品に含まれていたことも事実です。
危険性を過大評価する必要はありませんが、検出された事実を無視する必要もないでしょう。
私が重要だと思うのは、危険か安全かという二者択一ではなく、その製品を日常的に摂取する必要性と、得られる利益を考えることです。
日本人のカドミウム摂取量はどのくらい?
日本でも、食品に含まれるカドミウムについて評価が行われています。
食品安全委員会は、2024年の食品健康影響評価において、カドミウムの耐容週間摂取量を、体重1kg当たり週7µgとしています。
耐容週間摂取量とは、生涯にわたって摂取し続けても、健康への悪影響がないと推定される1週間当たりの摂取量です。
一方、2022年の日本人の食事からの推定摂取量は、体重1kg当たり週2.03µgと報告されています。
これは耐容週間摂取量の約30%に相当します。
つまり、日本人の平均的な食事からの推定摂取量は、設定された耐容週間摂取量を下回っています。
食品安全委員会も、一般の日本人における食品からのカドミウム摂取が、健康に影響を及ぼす可能性は低いと評価しています。
ただし、これは平均的な摂取量に基づく評価です。
個人の食生活によって摂取量は異なり、特定のプロテイン製品を追加した場合の影響まで示しているわけではありません。
また、カドミウムはプロテインパウダーだけに含まれる特別な物質でもありません。
だからこそ、特定の食品だけを過度に恐れるのではなく、食生活全体を考える必要があります。
タンパク質は必要。でも、プロテインパウダーは必要なのか?
ここで、最初の疑問に戻ります。
タンパク質は、筋肉だけでなく、皮膚や臓器、酵素など、身体を構成する重要な栄養素です。
筋肉を維持し、運動による身体の適応を支えるためにも、十分なタンパク質を摂取することは大切です。
しかし、その供給源はプロテインパウダーでなければならないのでしょうか。
肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など、普段の食事にもタンパク質は含まれています。
これらの食品からは、タンパク質だけでなく、ビタミンやミネラルなど、さまざまな栄養素を摂取できます。
米国国立衛生研究所(NIH)の資料でも、運動をする人のタンパク質需要は、通常の食品から満たすことが可能であり、必要に応じてサプリメントを利用できると説明されています。
もちろん、プロテインパウダーには利点があります。
調理の手間が少なく、持ち運びやすく、必要なタンパク質を手軽に補給できます。
運動量が多い人や、食事だけでは十分なタンパク質を摂取しにくい人にとっては、有用な選択肢になるでしょう。
高齢者などで食事量が不足している場合にも、栄養状態や身体の状況に応じて補助的に利用することには意味があります。
しかし、普段の食事から必要量を確保できている人が、健康のために必ずプロテインパウダーを追加しなければならない理由はありません。
便利であることと、必要であることは、別の話です。
筋肉の健康を考える際にも、栄養だけでなく、身体を動かす習慣が重要です。
筋トレと有酸素運動のそれぞれの役割については、以前の記事「筋トレと有酸素運動、健康のためにはどちらが重要?」でも解説しています。
健康づくりで優先したいのは、プロテインよりも食事を整えること
私は、一般的な健康づくりにおいて、プロテインパウダーを飲むことが第一優先になるとは考えていません。
まず確認したいのは、日々の食生活です。
必要なエネルギーを摂取できているか。
タンパク質だけでなく、脂質や炭水化物、ビタミン、ミネラルなどをバランスよく摂取できているか。
特定の食品に偏らず、さまざまな食品を食べられているか。
こうした基本的な部分を整えることが、健康づくりの土台になると考えています。
もちろん、一般の食品にもカドミウムなどの環境由来の物質が含まれる場合があります。
そのため、食品から摂取すれば重金属のリスクがなくなるということではありません。
しかし、食事を整えることで、タンパク質以外の栄養素も含めた全体の栄養状態を改善することができます。
プロテインパウダーは、そのうえで必要に応じて不足分を補うための選択肢の一つです。
私は、プロテインパウダーを一律に否定したいわけではありません。
ただ、製品によっては重金属への曝露を増やす可能性があることを踏まえると、必要性を確認せず、健康のためという理由だけで習慣的に追加することには慎重でありたいと思います。
健康づくりの第一歩は、何かを追加することではなく、まず普段の食事を整えることではないでしょうか。
食生活については、食品の種類だけでなく、食欲や食べる量に影響する要因にも目を向ける必要があります。
以前の記事「超加工食品はなぜ食べ過ぎにつながる?」では、食品の性質と食欲の関係について研究をもとに整理しています。
プロテインパウダーを利用するなら、何を確認すべきか
食事だけでは必要なタンパク質を確保できず、プロテインパウダーを利用する場合には、次の点を確認したいところです。
- 本当に必要か:普段の食事から、どの程度のタンパク質を摂取できているか。
- どのような製品か:原料や製造元、品質管理に関する情報が確認できるか。
- 検査情報はあるか:鉛やカドミウムなどについて、第三者機関による検査結果が公開されているか。
- 過度に依存していないか:特定の製品だけに頼らず、食事全体から栄養を確保できているか。
検査結果の公開は、製品を選ぶ際の判断材料になります。
ただし、「検査済み」という表示だけで、あらゆるリスクがなくなるわけではありません。
また、腎機能に問題がある方や、食事制限が必要な方では、タンパク質の適切な摂取量そのものが異なる場合があります。
そのような場合は、自己判断で大量に補給するのではなく、医師や管理栄養士などに相談することが大切です。
まとめ|タンパク質が必要なことと、プロテインが必要なことは別の話
2025年に公表された米国の調査では、一部のプロテインパウダーで、重金属への曝露に関する基準を超える結果が報告されました。
特に、植物性プロテインやチョコレート味の製品では、カドミウムの含有量に大きな違いが見られました。
ただし、重金属が検出されたからといって、その製品を摂取すれば健康被害が起きるということではありません。
また、今回の調査だけで、プロテインパウダー全体を危険だと断定することもできません。
私が今回伝えたいのは、プロテインパウダーを一律に否定することではありません。
一般的な健康づくりにおいて、まず優先すべきことは何なのか、ということです。
タンパク質が必要であることと、プロテインパウダーが必要であることは、別の話です。
健康づくりの第一歩は、何かを追加することではなく、まず普段の食事を整えること。
そのうえで、必要があれば補助的な手段を検討する。
私は、この順番を大切にしたいと思います。
そして、筋肉の健康を考えるなら、タンパク質の摂取量だけでなく、筋肉の質や運動習慣にも目を向ける必要があります。
加齢に伴う筋肉の変化については、関連記事「筋肉の霜降り化とは?筋肉に脂肪がたまる原因と運動の効果」でも解説しています。
参考文献・資料
- Clean Label Project. (2025). 2024–25 Protein Powder Category Report.
調査報告書(PDF) - 食品安全委員会. (2024). 「カドミウムの食品健康影響評価(第3版)」.
食品安全委員会の解説 - California Office of Environmental Health Hazard Assessment. Proposition 65 in Plain Language.
制度の解説 - National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. Dietary Supplements for Exercise and Athletic Performance.
NIH公式資料


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